いい家ラボの野上です。
家の安全性を考えた時、建物自体の安全性(耐震性・耐火性)だけでなく、土地そのものの安全性も重要です。
土地の安全性を保つために行うのが、地盤調査と土地改良工事。
- どんな建物を建てるか
- どんな土地か
により、実施する地盤調査と地盤改良工事が異なります。
地盤調査は、通常「仮契約(申込)」(私たち野上工務店では「設計契約」)後、正規の設計図面作成と同時進行で進めます。
ですので、通常地盤調査は、仮申し込みをした工務店やハウスメーカー、建築事務所等が行います。
今回は、注文住宅を建てるなら知っておきたい、地盤調査と地盤改良工事の種類と、それぞれの特徴をご案内します。
地盤調査とは
地盤調査とはその地盤の上に建物を建設できるかどうか、建物を支えるだけの強度があるか判断するために、地盤の強度を測定することです。
地質、土質、地下水などその形状、質、量などを調べます。調査は、地面の一部にロッド(鉄の棒)を打ち込んだり、ねじりながら掘り進めたりして行われ、その時に必要とした力をもとに地中の構造を把握します。
この調査結果によって、地盤改良が必要か、必要だとしたら、安全面・コスト面でどの工法が有効かを検討します。
地盤調査の重要性
お金がかかる地盤調査、家を建てる時、地盤調査が必要か、という事自体に疑問が出てくると思います。結論から言うと、家の安全面から、日本の土地では地盤調査は必須です。
では、地盤調査・地盤改良工事はなぜ必要なのでしょうか。それには日本の土地の特徴を知ることでしょう。
日本の土地の特徴
日本の土地には海や川、山を削ったり、池などの埋め立て地も多く宅地の半分は地盤改良が必要な軟弱地盤と言われています。
近年では大規模地震や台風による水害が頻繁に発生しており、建物の下(土の中)にも注意が必要になっています。平成30年9月6日に発生した北海道胆振東部地震がきっかけとなり発生した札幌市清田区里塚地区の液状化※1現象は、震源地から60キロも離れていましたが地面が陥没し多くの住宅が傾きました。
※1.液状化とは:
液状化とは、ゆるく堆積した砂質の土地が地震などの激しい揺れによって、まるで液体のようにやわらかくなり動いてしまう現象のことをいいます。
このように、日本の土地は、軟弱地盤という元々の土地の特徴に加え、地震や台風による水害などの災害による液状化、地面の陥没の可能性を含んでいます。このような土地に家を建てる為、注文住宅を建てるうえで地盤調査は必要不可欠な項目であり、建物自体の耐震を考えることと同様に大切なのです。
地盤調査の種類
地盤調査は一般的に3種類あり、どのような建物を建てるかにより実施する試験方法が変わります。
- スウェーデン式サウンディング試験/スクリュードライバー・サウンディング(SDS)試験
→木造住宅 - 標準貫入試験(ボーリング試験)
→重量系の建物、3階建て以上の建物 - 平板載荷試験
→プレハブをはじめとした簡易建物
1.スウェーデン式サウンディング(SWS)試験とスクリュードライバー・サウンディング(SDS)試験
スウェーデン式サウンディング(SWS)試験とは
スウェーデン式サウンディング試験とは、1917年に北欧スウェーデンの国有鉄道により不良路盤の実態調査をするための方法として採用されたことが始まりで、北欧諸国ではさまざまな建築に用いられるようになりました。日本での普及は1950年代前半に建設省が堤防の地盤調査へ導入したことがきっかけで、1976年にJIS規格に制定されました。戸建て住宅の地盤調査方法としてもっとも普及しています。
スクリュードライバー・サウンディング(SDS)試験とは
スクリュードライバー・サウンディング(SDS)試験は、従来のスウェーデン式サウンディング(SWS)試験では測定できなかった詳細な土質(沖積層・洪積層・ローム層・腐植土層)の判定を可能にした、地盤の土質をより正確に判断し、的確な地盤評価を支援するための試験法です。SWS試験より後発の試験法です。
SWS試験・SDS試験は、木造住宅で実施する試験法
木造の注文住宅を建てる場合は、概ね、このスウェーデン式サウンディング(SWS)試験かスクリュードライバー・サウンディング(SDS)試験を実施することになります。
2つの試験法の違い
調査の作業自体はスウェーデン式サウンディング試験もスクリュードライバー・サウンディング試験も同様で、使用する機材が異なるだけです。両者は金額が異なり、スクリュードライバー・サウンディング(SDS)試験の方が若干金額が上がります。
どちらの試験法が良いか?
正確性は妥協できませんので、金額は若干上がりますが、スクリュードライバー・サウンディング(SDS)試験がおすすめです。
2.標準貫入試験(ボーリング試験)|重量計の建物、三階建て以上の建物
標準貫入試験(ボーリング試験)とは
標準貫入試験(ボーリング試験)とは、掘削機械で掘った孔を利用し、地盤の硬さを測定する標準貫入試験を行なう調査で、通常は土のサンプリングと同時に行なわれます。
特徴
スウェーデン式サウンディング試験では貫入不能などんなに深い層、硬い層でも掘り進むことができるのが特徴です。
標準貫入試験(ボーリング試験)が必要なケース
- 3階建て以上の物件
- 鉄骨造などの物件の確認申請に「構造計算書」を添付しなければならないとき
このような場合は、標準貫入試験による地盤調査が必要です。
3.平板載荷試験
平板載荷試験とは
平板載荷試験とは原地盤に載荷板(直径30cmの円盤)を設置し、そこに垂直荷重を与えて荷重の大きさと載荷板の沈下量との関係から地盤を調べる試験方法です。
特徴
地盤に直接力を加えるという行為ができるため信頼性が高く、ボーリング調査の欠点であった騒音や振動が出にくいので、ご近所のご迷惑になることもありません。装置の設置から撤去まで含めて、比較的少ない時間で調査を終えられるという特徴もあります。
しかし、使用される板が直径30㎝と小さいため、あまり深く地盤を調べられず、調べた箇所より更に底の地盤がゆるんでいる可能性もあります。たとえ平板載荷試験で問題がなくても、地盤沈下を起こす可能性があります。
また、平板載荷試験を行うためにはある程度広い場所が必要で、作業スペースが大きいという点も知っておきましょう。
平板載荷試験が向いている土地・建物
ある程度広い作業スペースがある土地で、プレハブをはじめとした簡易建物を建てる場合に向いている試験です。
地盤調査を行う際に施工主が気を付けるポイント
調査の抜けで、後々追加工事や予算がかかる、なんてことがあっては余計に予算がかかります。少しの価格の違いで必要な調査をしない、という事がないよう、土地や建物に必要な調査をしてもらいましょう。
地盤改良工事
地盤改良工事は、地盤調査の結果で、土地改良が必要と判断された土地に対して行う工事の事を指します。調査結果を基に、その土地に建てる建物に合わせ、適切な地盤改良工事を行うことが求められます。
地盤改良工事3つの工法
地盤改良工事には3つの工法があります。地盤改良が必要か、必要だとしたらどのような方法が安全面・コスト面でも有効かを3つの工法から検討します。
- 表層改良工法
- 柱状改良工法
- 鋼管杭工法
1.表層改良工法
表層改良工法とは
表層改良は地表から1~2m以内に固い地盤があれば行うことができる、軟弱地盤の層が深度2mまでの場合に行える地盤強化の工法です。下部の良好地盤層と一体化させて支持地盤を造る工法で、表層部の軟弱地盤部分を掘削し、その部分にセメント系固化材と掘った土を混ぜて十分に締固めて強度の高い地盤にします。
表層改良工法が向いている土地
表層改良工事は、勾配のあまりない土地、地下の水位が地盤の改良面よりも低い土地が向いています。
勾配のきつい土地は施工が難しい場合があります。また、地盤改良面よりも地下水位が高い場合は対応できません。
2.柱状改良工法
柱状改良工法とは
柱状改良とは軟弱地盤の深さが2m~8mの場合に用いられる工法です。地中に丸い穴をあけ、地中の強固な支持層まで掘削し、同時にセメント固化剤と水を機械で攪拌(かくはん)しながら注入し、コンクリートの柱を土の中に造って土地・建物を支える工法のことです。
柱状改良工法が向いている土地
柱状改良工法は、地下に水がある軟弱地盤、地面が傾斜している土地です。地下に水があっても影響が比較的少なく、表層改良では難しい、地盤が傾斜している土地でも対応することができます。
3.鋼管杭工法
鋼管杭工法とは
鋼管杭工法とは、軟弱地盤が深度2m~30mまで工事が可能で、表層改良、柱状改良よりもさらに地盤が弱い場合、狭小地など大型重機の搬入が難しい場合に行う、地盤改良の中で一番深いところまで支えを入れることができる工法です。鋼製の杭の先端にスクリューフィンをつけ回転させて土地に掘り、杭を掘り込んだら最後に雨水が入らないようにフタをつけて完了します。
鋼管杭工法が向いている土地
表層改良、柱状改良よりもさらに地盤が弱い場合、狭小地など大型重機の搬入が難しい場合は、鋼管杭工法で地盤改良工事を行います。
まとめ
地盤調査を実施し、適切な地盤改良を行うことは、建物の耐震を考えることと同様に大切です。しかし建物の下を断面から見ることはもちろん、地中の状況を実際に確認することは専門業者以外には難しく、信頼できる業者さん選びが重要になります。